読了目安:約6〜7分 テーマ:塗料を用途で見る習慣
はじめに
塗料売り場の前で立ち止まる時間が、ボクには長くあった。 9年ほど造形を続けてきて、最初の数年はとにかく「色が欲しい」だけで塗料を買っていた。
だけど、同じ赤でも素材によって仕上がりは全然違うし、乾燥の癖や扱いのストレスもまったく別物だった。 その違いに気づけるようになったのは、「用途」という視点で塗料を見るようになってからだった。
この記事は、塗料選びを「用途で考える」という判断軸が、どうやって自分の中に育っていったかを整理した記録でもある。
用途別で塗料を見る習慣
大きなパーツには水性塗料
鎧のように面積が広い造形物ほど、ムラは目立ちやすい。 nuro のような伸びのいい水性塗料は、厚塗りになっても比較的扱いやすく、水で少し溶かしながら広げることで膜が整っていく。
セーバルのギターやナンジャモのコイルを塗ったときも、 この「ざっくり大面積を塗れる塗料」に何度も助けられた。
細かい部分はアクリルガッシュ
模様や差し色を置くとき、アクリルガッシュの発色と扱いやすさは頼もしい。 乾きが早いので、勢いのある線がそのまま残る。
一方で、大きな面積には向いていないことも痛感した。 量が少なく広がらないため、かえってムラになりやすい。 「小さい部分で活きる塗料なんだ」と理解した瞬間、迷いはぐっと減った。
布やレザーには布用塗料
布は塗料が染み込むため、一般的な塗料だと硬くなってしまう。 Setacolor のように柔軟性を残せる塗料は、衣装のマークや装飾を描くときに本当に助けられた。
レザーの金具風パーツや、微妙な色差を作りたい場面とも相性がいい。 ただし風合いは変わるので、塗る面積や場所には注意が必要だと身に染みている。
迷ったときの判断基準
塗る対象を先に思い出す
塗料を見る前に、「何を塗るんだっけ」と考える癖が役に立った。 EVAボード、プラスチック、布、発泡スチロール。 素材が分かるだけで、選択肢は自然と絞られていく。
ラッカースプレーで発泡スチロールを溶かした恐怖は、今でも素材を忘れない理由のひとつだ。
仕上げたい表情を言語化する
艶を出したいのか、落ち着いた質感にしたいのか。 金属っぽい光沢が欲しいのか。
「この作品がどんな表情をしてほしいか」を先に考えるようになってから、 思った色にならない理由が少しずつ説明できるようになった。
迷ったら3つの軸に戻る
大きな面は nuro、細かい部分はアクリルガッシュ、布は Setacolor。 この三つの軸は、今でも塗料選びで迷ったときに必ず立ち返る判断基準になっている。
用途別の思考法で変わったこと
迷う時間が減って作業が進む
塗料を用途で切り分けられるようになると、買い物が短くなった。 「使えなかった塗料が溜まる」ことも減り、作業そのものが前に進むようになった。
塗料が自分の癖を映すようになった
厚塗りしすぎる癖、乾燥を待てない癖、ムラをごまかしたい癖。 用途で塗料を選ぶようになってから、そうした癖が少しずつ見えるようになった。
下地やニスの考え方にも繋がった
用途の軸ができたことで、「塗料だけで解決しようとしない」考え方にも繋がった。 下地やニスは、仕上がりを支える大事な工程だと実感している。
おわりに
塗料で迷わなくなるのは、経験年数よりも「用途の視点」が育つからだとボクは感じている。 何を塗りたいのか、どんな表情にしたいのか。 それを先に考えるだけで、塗料の瓶はただの色から「作品の道具」に変わる。
この考え方を軸に、塗料選び全体を整理したまとめ記事も用意しているので、 全体像を掴みたい人はそちらも参考にしてほしい。
次に読む記事
- 水性塗料の使い方と失敗しない塗り方-Nuro
- 布用塗料の特徴と使いどころ、注意点まとめ
- アクリル絵の具細部に向いた塗料という考え方
- 塗装の失敗を減らす乾燥と素材理解の基本
- 造形塗装の微差:成功と失敗の「あっ」を見逃さない視点
- 塗装で失敗しないための「触らない」習慣と待つ技術
Notes
- * water-base paint:水性塗料のこと
- * acrylic gouache:発色が強いアクリル絵の具の一種
- * textile paint:布に定着性を持つ塗料の総称