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本記事は筆者 Yosure の創作経験と考え方に基づく記録です。 一般的なハウツーではなく、創作過程の共有を目的としています。

アクリル絵の具で迷わなくなった理由:細部に向いた塗料という考え方

作成, 造形

読了目安:約6〜7分 テーマ:アクリル絵の具の特性と細部への使いどころ

ボクがアクリル絵の具に最初に惹かれたのは、単純に「色が綺麗だから」だった。 造形の差し色や模様を描くとき、その発色は他の塗料にはない安心感をくれた。

この記事で扱っているのは、いわゆる「アクリル絵の具」と呼ばれる身近な画材だ。 造形の現場では、発色が強く不透明なタイプ(一般にアクリルガッシュと呼ばれるもの)を使うことが多いので、この記事ではその性質を前提に話を進めている。

この塗料が本当に輝く場所は「細部」だと気づいたのは、だいぶ後になってからだった。 この記事では、アクリル絵の具(アクリルガッシュ系)の繊細な強みと、どこに使うと一番力を発揮するのかを、ボクの体験ベースでまとめていく。

小さな動きがそのまま色になる

筆の癖が作品の表情になる瞬間

模様を描いているとき、ときどき手が震えることがある。 アクリルガッシュはその震えをごまかしてくれない。 乾きが早いから、思った通りの線も、少し迷った線も、そのまま残る。 怖いと感じた時期もあったけれど、慣れてくると「ここにしか出ない表情だ」と思えるようになった。 小さな動きが作品に混ざり込む、その繊細さがボクはけっこう好きだ。

速乾性がつくる緊張感と集中

アクリルガッシュは、乾くのが早い。 ゆっくり考えながら塗るには向いていないけれど、その分、線を引くときの集中力を引き出してくれる。 考える前に筆が動いてしまって、そのまま固まってしまうこともある。 それでも「今の一発で決める」という感覚が、細かい作業にほどよい緊張をくれる。 落書きのように描いても線がちゃんと残る、そのスピード感が作業を少し楽しくしている。

混色の自由度と“自分の色”を作る感覚

微妙な色差を作りやすい絵の具

アクリルガッシュの好きなところのひとつが、混色したときの素直さだ。 既製の塗料ではなかなか見つからない、少しだけくすんだ青や、深すぎない赤を作りやすい。 造形をしていると「あと少しだけ違う色がほしい」という場面が本当に多いけれど、 この絵の具は、そういうわがままに付き合ってくれる感じがある。

決めた色をすぐに塗れるスピード

混色して「これでいこう」と決めた色を、そのまますぐ塗れるのも便利だ。 乾燥が遅い塗料だと、迷っているうちにまたいじりたくなってしまう。 アクリルガッシュは、決めた色をその場で置いて、さっと次の作業に移れるテンポの良さがある。 もし乾くのがもっと遅かったら、ボクはきっと毎回塗りなおしていただろうと思う。

向いていない場所が教えてくれたこと

広い面に使ってみて分かったこと

一度、大きな面をアクリルガッシュだけで塗ろうとしたことがある。 細かいパーツに便利なら、広い面もいけるだろうと軽く考えていた。 だけど、実際にやってみると容器は小さいし、伸びはそこまで良くないし、ムラはごまかしにくい。 「綺麗に塗ろうとするほど負担が大きくなる塗り方だな」と感じて、途中で方針を変えたことがある。 そこから、アクリルガッシュは「面全体を塗る塗料ではなく、細部を任せる塗料だ」とはっきり分かった。

万能ではないからこそ、役割がはっきりする

どこにでも使える万能塗料ではない、というのは一見マイナスに見える。 でも、使っているうちに「ここはアクリルガッシュの出番だな」と判断できる場面が増えてきた。 万能ではないからこそ、得意な場所がくっきり見えてくる。 その感覚が、自分の中の塗料マップを整理してくれたと思っている。

今のボクがアクリルガッシュに求めていること

細部を任せられる安心感

模様やライン、差し色を置くとき、ボクは迷わずアクリルガッシュを手に取る。 「ここはこの絵の具に任せる」と決めている領域があると、作業のストレスが減る。 発泡スチロールのような素材にも使いやすいので、造形との相性も悪くない。 細かいところを締めてくれる存在として、今は完全に“細部担当”の位置づけになっている。

発色を守るためのニスという一手間

弱点としては、乾燥後に少し色がくすんで見えることがある点だと思う。 塗った直後の「これだ」という色が、そのまま残ってくれないことがある。 だから今は、アクリルガッシュで描いた部分には、仕上げにニスをかけるようにしている。 ひと手間ではあるけれど、そのおかげで自分が決めた線や色味をちゃんと固定できるようになった。

おわりに

アクリルガッシュは、ボクにとって「塗るための塗料」というより、「細部を描くための道具」に近い存在になった。 小さな線や色が作品の一部になっていく、その感覚が好きで、今もずっと使い続けている。 広い面を塗るには向いていないけれど、それは欠点ではなく役割だと思っている。 細部を大事にしたい人ほど、この絵の具の繊細さと自由度は、きっと頼もしく感じるはずだ。 次の記事では、アクリルガッシュとニスの組み合わせ方や、他の塗料との使い分けについても掘り下げてみたい。


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Notes

  • * アクリル絵の具:水性で乾燥後に耐水性を持つ絵の具の総称。発色や不透明度には種類がある。
  • * アクリルガッシュ:不透明性と発色の強さが特徴のアクリル絵の具。造形やイラストなど幅広く使われている。
  • * ニス:乾いた塗膜の上からかける透明の保護剤。艶や色味の調整、剥がれ防止の目的で使う。

Yosure (ヨシュア)

衣装・造形・撮影・編集を一人で完結させる創作系デザイナー。実験ログとして制作の考え方と手順を記録しています。

記載内容はすべて筆者 Yosure の経験則です。 参考にするのは自由ですが、完全な模倣や一挙手一投足の再現は推奨しません。 あなたの創作には、あなたの判断と責任が必要です。