読了目安:約7〜8分 テーマ:素材理解と塗料選び
はじめに
塗料を選ぶとき、昔のボクは「どの色が綺麗か」で判断していた。 棚に並ぶ色は誘惑だし、ラベルの発色は期待を膨らませる。
でも、色だけで選んでいた頃の仕上がりは、今思い返すと偶然の産物に近かった。 塗装が楽になり始めたのは、色を見る前に「何に塗るか」を考える癖が育ってきた頃だった。
この記事は、塗料選びを「素材から考える」という視点が、 どうやって自分の中で軸になっていったかを整理したものだ。
素材が答えを教えてくれた瞬間
怖い失敗が視点を変えた
発泡スチロールにラッカースプレーをかけて溶けたときは、本当に焦った。 モコモコと溶け落ちる造形を止められず、手元しか見えなかった。
この経験が、ボクの視線を「塗料」から「素材」へ引き戻したと思っている。 どんな塗料より、素材の都合のほうが強いという当たり前が、身体に刺さった瞬間だった。
素材はそれぞれ性格が違う
EVAボードは塗料を素直に受け止めてくれるが、布は柔らかさが奪われることがある。 プラスチックは綺麗に塗れても、乾いてから剥がれることがある。
金属のような硬い面は塗料が弾かれ、レザーは妙に沈んで色の出方が変わる。 素材の癖に気づく前は、「なんでこうなるの?」がずっと分からなかった。
失敗の理由が言語化できるようになった
布が硬くなる理由、プラスチックが剥がれる理由、発泡スチロールが溶ける理由。 どれも塗料が悪いわけではなく、素材の性格との衝突だった。
その構図が見えるようになると、塗料選びは一気に静かになった。
素材を見る癖が選択を楽にする
「何を塗るか」が最初の問いになる
塗料売り場で迷うとき、ボクは「あのパーツって何でできてたっけ」と自分に問う。 EVA?布?プラスチック?レザー?
その問いが出た時点で、選ぶべき塗料は半分くらい決まってしまう。 塗料の瓶を見る前に、作品の素材を見ることで選択肢が整理されていく。
素材は仕上がりの表情まで決める
同じ赤でも、布に塗る赤とボードに塗る赤は違って見える。 光沢、吸い込み、凹凸の残り方がまるで違う。
素材を知ると、「思った色」ではなく 「その素材で期待できる色」が見えてくるようになった。
素材と仲良くなると作業そのものが変わる
失敗が減る
素材を見る癖ができると、「これは溶ける」「これは硬くなる」が予測できる。 一か八かの塗装が減り、作業そのものが落ち着いたものに変わっていった。
素材ごとの魅力も見える
EVAは塗り重ねる膜が綺麗だし、布は最小限の塗りで風合いが変わるのが面白い。 プラスチックは下地が決まると、驚くほど綺麗になる。
その瞬間、「塗る」という行為自体が楽しくなった。
下地やニスの存在に気づけるようになる
素材を見るようになったことで、 「塗料だけで解決しようとしない」考え方にも繋がった。
下地は素材と塗料の橋渡しで、 その理解こそが塗装の安定に繋がっている。 この話は別の記事で丁寧に整理していきたい。
おわりに
塗料が難しいわけじゃない。 素材を見る癖がなかっただけなのかもしれない、と今は思っている。
素材が見えると、塗料の瓶は「色の道具」ではなく、 作品と素材をつなぐ翻訳者みたいな存在になる。
この視点は、用途で考える塗装や、下地・ニスの話にもそのまま繋がっていく。
塗料選び全体の考え方を整理したまとめはこちら: 塗料選びの判断軸まとめ(ハブ記事)
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- 造形塗装の微差:成功と失敗の「あっ」を見逃さない視点
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Notes
- * water-base paint:水性塗料のこと
- * acrylic gouache:発色が強いアクリル絵の具の一種
- * textile paint:布に定着性を持つ塗料の総称